夜も更けたとある駅のコインロッカー通り前
一人の少女が、籠の様な物を持ってこのロッカー群の前に立ってたの。
その表情はこの世の闇のその先の深淵を見たかのように黒くドロドロで隈もすごかった。
映画なら焼きたてのパイでも運ぶのか?みたいな見た目の手提げ型の籠には真っ黒な布が少なくとも二重以上にその下には新聞紙で何かを丸めている
躊躇する姿勢は見せながらも、籠は少しずつ少女の手によってコインロッカーの中に入れられ、そしていつの間にかゆっくりと扉を閉められた。薄く暗い夜に、ロッカーの中から弱々しい赤ちゃんの泣き声が耳を澄ますと聞こえてくる程度に響いているが
彼女の耳には届いていなかった。と言うか届いていないと言い聞かせた。自分は産んだ赤ちゃんなんかをコインロッカーの中に隠していないし、そもそも子供を身籠って居ないと言い聞かせる。
彼女の服装的には、とある名門学園の生徒だった
駅のホームから離れていくにつれて、どんどんと自分のしたことが恐ろしく感じられて両耳を自分の両手で塞ぎ、涙目になりながら走ってその場から離れる
家に着いたのは朝方になりかけた頃
途中で何回か転んだからか分からないけど、膝を擦り?いてしまい血がタイツに滲んでいた。
彼女はそれを見て、自分があの子を産み落としたその瞬間の事を思い出したの
感じた事が無いような激痛
流れる血で辺りは真っ赤に染まって事が終わった時には、虚ろな目で途切れ途切れな呼吸を繰り返すだけの廃人のようになってしまっていた。
只、そこには別の音も響いた。生まれたばかりの赤ん坊の泣き声
普段なら感動する場面だろう。だけど彼女にはこの事実を受け入れられなかった
だって望んでいないから
悪男に無理矢理させられ、それからだった
赤ちゃんに罪は一切無いのにその産み落とした子を犯人のあいつ等との遺伝子が入っていると思うと怖くて怖くて仕方が無かった。それに育て方なんて知らない、育てる余裕なんてない。お金なんてそんなにたくさん持ってない