それではおつかれさまでした 2025-07-13 23:10:54 |
通報 |
その日は死んだように眠った
特に怖い夢は見なかったけど寝心地は悪いし、寝起きも最悪だった
赤ちゃんに罪は無いと分かっていても無理だった。精神的にも肉体的にも限界が来ていたから...
なんて都合のいい解釈で、自分を無理やり納得させる
でもそんな解釈なんて一時の差し凌ぎでしかない。起きてから数十分もすれば、昨日自分がした事がどんどん..あの帰り道で走っていた時よりも恐ろしく感じられた
でもそれは、赤ちゃんの事じゃない
全部自分の事だ
「見つかったら...?退学....逮捕もされる」
「...逃げられない....将来も..終わる..」
まだまだやりたい事が沢山あったのに。嗚呼、なんてかわいそうな自分
怖くてテレビがつけられない、スマホも開けない。学校にも行けない。そのニュースが目に飛び込んできた瞬間、その話が耳に飛んできた瞬間、自分はどうなるだろうか
そんな自分の事ばかりを小一時間考え込んだ後ようやく
赤ちゃんの事についても考え始めた
ロッカーの中、窒息?それとも餓死か..
死んだらどうなるのか..そのままそこで腐るのか
自分はなんてことをしてしまったんだろうって
怖くて外に出る事も出来なくなってしまった。
だけど、コインロッカーの中に赤ちゃんを放置してから4日目の夜、彼女は気が付けば外に出てあの場所に来ていた。自分が捨てた子が居るあの場所まで
罪悪感に蝕まれたのだ
いくら自分が望んでいないと考えても、結局は自分の子供
人に見られない様に終電が終わって駅も封鎖された後に不法に侵入する。
ド田舎の方にある駅だから監視カメラも壊れたまま放置されていることは知っていた。だからこんな事が出来る
「わたしの...」
コインロッカーに近づくにつれて、小さな泣き声が段々と大きく聞こえて来た。
まだ生きている。その希望に縋るように遂に目的の場所の前で彼女は立ち止まったんだ
自分の捨てた赤ちゃんが入った番号。手を伸ばして、目を瞑りながら
63番ロッカーを開ける__
うひぇへへへ
その瞬間、グチャグチャと嫌な音を立ててる。
それと同時に笑い声の様な物も聞こえたがきっと、きっと気のせいだ。
変な音を立てながら何かが地面に落ちて........
「へ....?」
何も落ちてない。
地面には何も落ちてない、落ちた形跡がない。
目線を上げてロッカーの狭い空間の中へと目を向ける。
そこには何も入って居なかった。
泣き声がしたはずなのに自分が入れたはずの赤ちゃんも、籠も新聞紙も黒い布も何もかも入っていなかった。
代わりに、紙が一枚
白紙には拙い字で文章が書かれていた
|