「推しが逮捕された日、世界が終わった気がした。」
推しの存在が、私の人生の支えだった。学校も家庭も自分自身さえも嫌いだったけど、推しだけが希望だった。推しがいるから我慢できた、推しのために生きてこれた。
でもその推しが薬物で逮捕された。
もうすべてに疲れ果てた。明日も憂鬱な日常が待っている。誰とも会いたくないし、自分自身にもなりたくない。死ぬことばかり考えていた。でも、ふと見つけた昔の本がきっかけで、違う選択肢が頭に浮かんだ。
「そうだ、旅に出よう。」
死ぬ前に、自分の足で世界を見てみよう。推しに捧げるはずだったお金を使って、今の自分を捨てて、最後に自由を味わう旅へ出る。目的地はない。ただ、地図と必要最低限の荷物だけを持って、スマホも置いて、今までの自分から逃げるように。
これは、希望も絶望も失った少女の、ひとつのささやかな脱出の物語。
