凛☆ 2013-12-21 10:44:49 |
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「私たちはね、メデューサなの」
「めでゅーさ…?」
幼いころの私には初め母の言っている事がよく分からなかった。何年もずっと森の中のこの小さな家で暮らしてきて、一度も自分たちが特別な存在だということなんて考えたこともなかった。
「メデューサというのはね、蛇なの。わたしたちはメデューサの仲間で目を合わせた人を石にしちゃうの。」
「へ…へび?い…いしにしちゃうの?」
「そうなの。だからね、もしマリーたちがお外に行ったら周りの人たちがびっくりしちゃうの。…だから、この家の外へ遊びに行ってはいけないよ。」
その時私はやっと外に行ってはいけない理由が分かった。そして、自分たちメデューサが一生この家の中で閉じこもってはいけないことを知りとても苦しくなった。出たい。外へ出たい。外に出て、世界を見たい。いろんな人とお話しして一緒に遊んで一緒にご飯を食べて。そして一緒にお散歩に行って綺麗なお花を見つけて。後、本に書いてあった「海」というものを見たい。海は広いと書いてあった。しょっぱくて広くて青くて、そして美しい。そんな近くにあって美しい世界に…私は触れられない、一生。どうして?なんで?どうして私はメデューサなの?なんでなの?なんでメデューサは…メデューサは他の人たちとは違うの?
その日私は一日中泣いた。森の奥にある小さな家に、私の泣き声だけがなり響いた。そしてそのあとは私は泣き疲れて寝てしまった。しかし、涙で視界が真っ白になった先にぼんやりと映った母の辛そうな顔だけは今でも忘れられない。あの時母は「ごめんね」と何度も言いながら
私の頭を撫で続けてくれた。
もう触れられないあの温もりをまた思い出して私は…少し胸が苦しくなった。
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