Ghost Finder ThomasCarnacki 2025-01-24 22:31:52 |
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乃東生(だいとうしょうず)
ある町の片隅で奇妙な失踪事件が相次いでいた。失踪者の共通点は、「乃東生」というメモを残していること。事件現場には奇妙な植物が生い茂り、その中には人間の形を模したものが混じっている。
「最近、変な事件が増えてるの、知ってる?」
友人からそう声をかけられたキツツキは、新聞の記事に目を通した。「乃東生」という文字が書かれたメモを残して消えた男女数名。その現場で発見された植物は、どれも同じ特徴を持っていた。
「葉っぱが人間の指みたいだって話だよ。ちょっと見てみたら?」
冗談めかした友人の言葉に、キツツキは好奇心を掻き立てられた。
数日後、キツツキはその植物が一時保管されているという研究施設を訪れた。ガラスケースの中に置かれた植物は、一見普通のシダ植物のように見えるが、近づいてみると、その葉は確かに人間の指のような形をしており、さらに細かいシワや爪のような模様まで備わっている。
「……本当に、これが植物?」
キツツキは息を呑んだ。だが、それ以上に異常だったのは、その植物が時折、微かに震えていることだった。
施設のスタッフに尋ねると、これを発見した警官が「植物の声が聞こえる」と言い残し、翌日失踪したという話を聞かされた。
「植物の声……?」
キツツキは記録を調べ始め、やがて「乃東生」という言葉が、冬至を境に新たな命が芽吹くことを意味する古語であると知る。
「これは、ただの植物じゃない。」
不安に駆られたキツツキは、その植物をさらに調査するため、夜遅くまで施設に残ることにした。
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夜半過ぎ、施設内の静寂を破るように、植物が突然動き出した。葉がわずかに揺れ、根から何かが這い出てくる音がする。
キツツキは恐る恐る近づくと、根の部分から現れたのは、人間の顔を模した瘤だった。それは麻子を見つめるようにゆっくりと口を動かし、かすれた声で何かを呟いた。
「……帰りたい。」
キツツキは背筋が凍りついた。根の形状は、まるで人間の骨のようであり、顔の部分は失踪者の特徴と一致していた。
その瞬間、施設全体の電気が落ち、暗闇の中で植物が一斉に動き出した。葉の触手がキツツキに絡みつき、声にならない悲鳴が喉に詰まった。
「乃東生……新たな命が、芽吹く。」
頭の中に直接響く声が聞こえたと同時に、キツツキの意識は遠のいていった――。
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翌朝、研究施設の職員が発見したのは、鉢植えの植物が異常に成長している光景だった。その中には、キツツキの顔を模した瘤が一つ付いていた。
以降も「乃東生」の植物は徐々に広まり、人間と植物が融合する怪現象は止まらなかった――。
(終)
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