根来 澄 2025-06-10 02:33:15 |
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プロローグ
「ご飯だぞー」
俺はいつもこの声で起きる。
夜、小説を読み過ぎて、寝不足だ。
俺は、洗ったのに黄ばみが取れないベッドから起き上がり、眠い目をこすりながら自分の部屋を出た。
とぼとぼと足を少しだけふらつかせながらリビングへと向かう。
「おはよう。ユイト。」
「おはよう!」
「おはよー」
「おはいよっ」
「おっはー」
10人の声がかさばりながらも一つ一つ聞こえた気がした。
僕はその一つ一つに答えるように言う。
「おはよう。」
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「今日の掃除当番誰だっけ?」
「あぁー、クロアだっけか?」
「えっ?私昨日やったよ?」
「じゃあ、サクラ?」
「…なんであんたたちは女子の私らを真っ先に疑うのさ…」
「…え、?い、いやぁ~」
「掃除やらないんならご飯無しね。」
「げっ…ごめんよサクラ~」
リビングに笑い声が響く。
俺はそのような光景を目にし、
「こういうやり取りが続けばいいな。」
と口から吐き出す。
その言葉にみんながおびえたのか、リビングはさっき、程よくうるさかった声がなくなった。
「わ、悪い…」
俺は申し訳なさそうに言う。
「まっ、まぁ?」
そうシンイチが言った瞬間に警報が鳴り響く。
「セッション・ノクテ、敵が近くに接近中。至急、準備を求。」
「あーあ。」
「始まったか…」
「…やるしか、ねぇか!」
「そ、そうだな…」
俺らはご飯を机に置いたまま席を立ち、急いで別室へと向かう。
そして急いでパジャマから戦争服へと着替え、剣を持つ。
「急げ!ユイト!!」
「船もう出ちゃうよ~!」
俺はそう言われて初めて急ぐ。
ここでぐだってたってって何にもならない。
だけど行きたくない。
俺はそう考えながらも足をわざと遅くする。
「てんめぇ、また行きたくねぇとか考えやがったな!!!」
そう後ろから言われ、ビクッと体が反応する。
その瞬間に手首をつかまれ、船へと急がされる。
「わ、悪い…俺……」
「誰もお前のことが悪いと思っちゃいない。そう思ってるのはみんなも同じだ。」
「だけど、みんなはそんな思いを心の内に秘めて、船に乗ってる。」
「…あ、あぁ。」
少し怖がりながらも、真剣に話を聞いて足を速める。
「みんなの思いのためにも、戦うしかねぇんだよ、ユイト。」
「…あぁ。ありがとう。」
俺は剣を強く握りしめた。
怖くても、泣きたくても、それでも。
この“ノクテ”を生き延びるために。
まだ名前決まってないんよ
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