根来 澄 2025-06-29 14:24:57 |
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俺の名前は高城湊斗。(たかしろみなと)
現在…
異世界に転移した。
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「いてててて…」
学校に行く途中、突然地面に魔法陣が浮かんで、俺の周りを光で包んだと思ったら、異世界に転移していた。
いやなんで?
まぁ陰キャでアニオタなこともあり、現状を受け入れることができているのだが…
俺は少しだけ痛い頭を手で押さえて、周りを見渡した。
「jfdskjkchuisdfr…」
「jk;ahuifnmdiocsnk…」
「何話してんだ…まったくわからんぞ…」
多分異世界語だろう。文字わかんなかったら俺生きていけない気がする。
そう思った時、そこで喋っていた青髪の綺麗な女性が俺に近づいてきた。
「えっとぉ?可愛すぎんか?」
その女性は俺の頭に手を当てて、なにやら詠唱を始めた。
「k;cahio;enjacgj」
詠唱が終わると同時に、何を喋っているのかがわかってきた。
「nklfaio…doうだろうね…」
「おっすごい。言葉が分かった。」
そう言葉を発すると、青髪の横にいた赤髪の女性が俺に高速で近寄ってきた。
「異世界人、ですよね!?」
「あっ、えっとぉ…」
赤髪の人が「そうですわね」と一言言い、俺に手を差し伸べた。
「私の名前はクレア・ミリアムですわ。あなたの名前は?」
差し伸べられた手を取り、立ち上がって俺は答えた。
「俺の名前は、高城湊斗です。」
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「なるほど、俺は間違って転移させられたと…」
「本当に、申し訳ありません。」
俺は案の定、転移したらしい。
クレアが魔法の練習をしていて、魔物を召喚しようと思ったんだけど、俺が転移したらしい。
いや俺魔物ってこと?
まぁいいや。異世界のアニメを見ていた時から転生、転移してみたいって思ってたし。
「いやいや、頭をあげてください。ラーニャさん。」
「そ、そうだよ!」
青髪で、クレアとあまり年は変わらないように見えるのに、クレアよりも大人っぽいこの人は「ラーニャ・ミリアム」だ。
二人は姉妹らしい。いやぁ、可愛いな。うん。
そう思った瞬間、玄関のドアが開けられた。
「ただいま~。」
「クレア?ラーニャ?いるー?」
クレアとラーニャは椅子から飛び降りて、玄関へと向かった。
「パパ!ママ!おかえり~!」
「おかえりなさい。お母さん、お父さん。」
俺は角からひょこっと顔を出して言った。
「あっえっとぉー、おかえりなさい?」
「ちょっとパパ、私たちの娘、男捕まえてきたわよ…」
「そうみたいだママ。もう俺たちの元を離れるのか…」
「ちょっと何か誤解してません!??」
クレアとラーニャと一緒に事情を説明した。
「ほぉ、クレアが魔物を召喚しようと思ってやってみたら湊斗、くん?が召喚されたと。」
「おかしいわね…召喚されるのは魔物だけなのに…」
「クレア。魔法陣、ちょっと見せてもらえる?」
お父さんがそう言うと、クレアはポッケにしまってあった紙に書かれてある魔法陣を取り出した。
お父さんはその魔法陣をじっくり見る。
「ふむ…やっぱり。」
「えっと、なにかわかったんですか?」
「魔法陣の”召喚”の部分が、”異世界人”に設定されている。」
「え!?」
お父さんがそう言った瞬間、クレアとラーニャが驚いたように声をあげる。
「ちょっと待ってパパ!魔法陣の設定が”異世界人”に設定されてたら、私の魔力じゃ足りなくて、召喚できないんじゃないの!?」
「そうですよ!私ならともかく、クレアがそんなに魔力を持っているはずがありません!」
「いや、違う。俺たちの娘たちは、もうそこまで魔力を持っているってことだ。」
クレアとラーニャの考えを否定するように、お父さんは即答する。
その即答したのとは裏腹に、お父さんはクレアとラーニャを抱きしめる。
「いやぁ!すごいぞ我が娘たちよ!!!!!」
「ちょ、ちょっとパパ!痛いよ!」
「や、やめてください、お父さん…」
そう拒絶するが、俺にはクレアたちは嬉しがっているように見えた。
その瞬間、お母さんが俺に耳打ちをした。
「ご飯食べた後、少し時間をくれないかしら?」
「あっ、いいですけど…」
お母さんが俺の回答を聞いた瞬間、「ご飯にしましょう!」と手を叩いた。
ご飯を食べた後、クレアとラーニャは自分の部屋に戻り、俺はお父さんとお母さんと一緒にリビングに残った。
「あの子達に聞かれたら…」
「あぁそうだな。湊斗くん、ちょっと外に来てくれ。」
俺は否定する隙もなく、お父さんに腕を掴まれ、外に出る。
外に出た瞬間、綺麗な夜景が夜空に広がる。
俺は思わず、「綺麗だ。」とこぼす。
お父さんはそれに反応し、「わっはっは!」と笑う。
「そうだろう!そうだろう!ここは田舎で、一番夜景がきれいと言われている場所なんだ!」
「私たちが結婚する前も、『ここで住もう』ってあなたずっと言ってたもの。」
お母さんが口に手を当てながら、笑う。
お父さんは恥ずかしながらも、話を変える。
「クレア達に、旅をさせたいんだ。」
俺はそれを聞いた瞬間、唾を呑んだ。
「魔王も倒されたこの世界は平和だ。だから娘たちにはこの広い世界を見て回ってほしくてね。」
「私たちも旅をしたんだし、やっぱり同じ形で人生を歩んでほしいわ。」
お父さんたちは夜景を後ろにし、俺に指をさす。
「湊斗くん、君も一緒に旅をしてもらいたい。」
「湊斗くん、あなたも一緒に旅をしてもらいたい。」
息をそろえてお父さんたちは言う。
俺は何も言わずにお父さんたちを見る。
「突然この世界に呼ばれて、旅をしろって無茶なこと言ってることは許しておくれ。」
「だけど私たちの娘でもあるし、湊斗くんにも、この世界を好きになってもらいたい。」
「だから、お願いだ。」
俺は迷わず言う。
「この世界が嫌いだなんて思ったことは一度もありません。なんたって俺の憧れでしたから。」
「向こうの世界では、嫌なことがいっぱいありました。だけど、もうその世界ではない。」
「勿論、向こうの世界みたいに嫌なこともあるかもしれないですけど、俺はこの世界を全うに生きたいと思います。クレアと、ラーニャと。」
俺は胸に手を当て、言った。ふとお母さんたちを見ると、泣いていた。
「え?…大丈夫ですか?」
「い、いや…」
「な、なんでもないぞ湊斗くん…」
今日、俺は異世界へ転移した。
向こうの世界では、陰キャで、アニオタだったけど、この世界では全うに生きることを決めた。
そして、美少女と旅をすることも決めた。
初めてだし、うまくいかないかもだけど、一生懸命生きようと思う。
この異世界ライフを。
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