根来 澄 2025-06-29 14:24:57 |
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2話
昨日、クレアたちに旅に出ることを話した。
クレアたちは少しだけ困った表情をしていたが、その中には少しだけ楽しみという感情もあった。
んで、今の状況に至る。
「湊斗さん!はい、あーん!」
「ずるいですクレアだけ!私のも食べてください!」
クレアとラーニャは俺を挟むように座り、スプーンで食べ物を俺の口へ運んでくる。
俺は少し戸惑いつつも、口に入れる。
「湊斗さん、美味しい?」
「湊斗さん、美味しいですか?」
二人は上目遣いで俺に問うてくる。
さすがに耐えれるわけもなく、俺の顔は真っ赤に染まった。
「こりゃ、先が思いやられますな。ママ。」
「そうですわね。パパ。」
「ちょっと止めてくれません!?」
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「湊斗さん!今日はステータスを見に行くよ~!」
「ステータスと言っても、手持ちの魔力が数値化されるだけですが…」
旅に出る日は明日。
今日は俺のステータスを見に行く日。
流石に高校の服で行くわけにはいかないから、お父さんから服を借りて、今着ている。
そしてドアの外にはクレアとラーニャが待っている。
「俺のステータスかぁ。なぁ、どれくらいが平均なんだ?」
俺は胸元にある紐を結びながら言う。
「100くらいが普通ですかね。まぁでもそのあとも魔力が増える可能性もあるので。」
「私とラーニャは1000も持ってるんだよ!この間測ってみたらそうだった!」
「え!?1000!?」
俺はその場で願う。
「お願いします神様!俺も1000くらい魔力を持っててください!!!流石にこの子たちに越えられるのは嫌です神様!!!!!!」
俺が涙目で両手を合わせながら空に願っていると、お父さんの声が聞こえた。
「もうそろそろ出るぞー!」
それに応えるように俺とクレアたちが「はーい!」と言う。
「ここから数分歩いたところに、アミューメントという少し大きい街に着くからね。湊斗くん。」
「アミューメントですか。」
「そう。名前の由来はわからないんだけど、まぁいい街だよ。」
「あっそうそう湊斗くん?前いた世界はどんな世界だったの?」
「それ俺も聞きたかった!ナイスだママ!」
俺は少しため息をつきながら、どんな世界なのかを答えた。
「凄く、便利な世界でしたよ。」
「便利な世界?」
「俺がよく使ってたのは”スマホ”ですね。”スマートフォン”」
「おぉ”スマートフォン”。名前がかっこいいな。」
「”スマホ”は持っている人同士で連絡を取り合えるんですよ。」
「手紙、みたいな感じなの?」
「少し違うかもです。手紙は紙に書いて、それを配達者に渡して、そして数日後、やっとその手紙が渡されるんですよね?」
「まぁ、そうだね。」
「スマホは、紙に書くのではなく、指で操作しながら文字を打ちます。”送信”のボタンを押すと、一瞬でその打った文章が送信され、相手に見えるようになります。」
俺はそこら辺に落ちている木の枝を取り、絵を描きながら説明した。
「おぉすごい!」
「なるほど!」
「俺もどういう仕組みかはわからないですけど、こういうものが身近にありました。」
「ほへー、便利な世界だな。」
「まぁだけど、魔力は向こうの世界にはありませんでした。」
「え!?このスマポとやらは、魔法でやっているのではないのか!?」
「スマポではなく、スマホです。」
俺は笑いながら答える。
「それじゃあ、モンスターとかはどうやって倒すのだ?剣一本…?」
「モンスターは、いませんでした。」
お父さんとお母さんが口元を押さえて驚く。
「モンスターが、いない!?」
「はい。魔王も、モンスターも、何もいません。強いて言えば、人間に害がない生き物は、”動物園”という場所で飼育して、保護していました。」
「保護!???」
お父さんとお母さんは少し疲れた様子で言った。
「その世界がすごいのは、なんとなく予想がついたよ……」
俺はその様子を見て、笑う。
その瞬間、クレアが俺たちに向かって大声で言う。
「パパー!ママー!湊斗さーん!もうちょっとで着くよー!」
「わかったぞー!クレアー!」
「ここから、俺の旅が始まる…!」
俺は右手を力強く上げた。
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「えぇー、湊斗さんの魔力は…」
冒険者ギルドの人たちが愕然となり、俺のステータスを二度見する。
「えっ、えっと…?」
「あっすみません。湊斗さんの魔力は…200…」
「えっと、聞こえなかったんですけど…」
「2000です!!!」
冒険者ギルドが沈黙した。
え?2000?ラーニャも言ってたけど、100くらいが平均なんじゃないのか?
いや、それとももう魔力が成長して2000くらいになったとか?いやそうだよな…流石に…
俺がそう思った瞬間、ギルドにいた人たちがものすごい速さで、俺に近寄ってきた。
「2000!?」
「こりゃ、また大物が生まれたな…」
「いや、俺は信じてたよ?ここのギルドに、もうそろそろ大物が来るとね…」
「すごい!すごい!この間の小娘以来だぞ!!」
「ちょっ、クレア!?ラーニャ!?一体何これ!??」
クレアとラーニャも愕然としていて、俺が呼んでも反応はない。
お父さんたちも同様で、開いた口が塞がっていなかった。
「少し皆さん落ち着いてください!」
そう言葉を放ったのは、ギルドの受付嬢だった。
「湊斗さんが困っているでしょう?」
受付嬢が周りにいた人たちを睨みつけると、一瞬で隅に移動した。
「おぉ、ありがとうございます。」
「いえいえ、それよりちょっと聞きたいことがあるのですが…」
受付嬢は少し困った様子で俺に聞いてきた。
「え?いいですけど…」
「勿論、あなたたちもですけどね。」
受付嬢がお父さんたちを指さし、それに気づいたら「え、えぇ…」と答えた。
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