すここい歌 2025-07-01 15:56:26 |
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「毎日来るお客様」
ある日、友人から小さなレストランのオーナーが急死したという話を聞いた。
そのレストランは、私たちが学生の頃によく行っていた場所だった。
レストランの雰囲気も落ち着いていて、料理も美味しく、特にそのオーナーの作るカレーが絶品だった。
だが、突然オーナーが亡くなったと聞き、驚きとともに寂しい気持ちになった。
数週間後、私は久しぶりにそのレストランの前を通りかかった。
閉店していることに気づいたが、何か気になるものが見えた。
店の窓から中がわずかに見え、まだ料理が並べられているようだった。
私は店内を覗こうとしたが、扉がわずかに開いていた。
「まさか、まだ誰かがいるのか?」
不安な気持ちが胸に広がったが、好奇心が勝り、私は店に入った。
カウンターには、何も変わらずカレーが湯気を立てて置かれていた。
ただ一つ、違うのは店内に座っている人物。
それは、私が何度も見たことがあるオーナーの姿だった。
だが、その目はどこか異様に冷たく、顔色も青白かった。
私は思わず声をかけた。「あなた…オーナーですよね?」
すると、オーナーがゆっくりと顔を上げ、微笑んだ。
「毎日来てくれてありがとう。君はいつも、カレーを食べてくれるお客様だから。」
その言葉に、私は背筋が凍るような感覚を覚えた。
そして気づいた。
オーナーの後ろの壁には、無数の写真が飾られている。そのすべてに、私と同じ顔をした人物が写っていた。
私はすぐに店を飛び出した。
帰り道、冷や汗が止まらなかった。
「どうして私の顔だけが……?」
その瞬間、後ろから聞こえたオーナーの声が耳に残った。
「毎日来てくれるお客様だから。」
その言葉の意味が、徐々に私の心に突き刺さった。
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