今年の夏、ひとり暮らしを始めた古いアパート。玄関先に前の住人が残した風鈴がぶら下がっていた。 チリン、チリン… 風もないのに夜になると必ず鳴る。 気味が悪くて外そうとしたら、ふと風鈴の内側に赤い文字が見えた。 「外すな。中にいる。」 ゾッとして後ずさると、後ろから女の声が囁いた。 「ここにいさせて…まだ、帰れないの…」