@悠斗 2025-09-13 20:17:30 |
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蝉時雨
盛夏。三年生最後の夏祭りを、去年と同じ面子で過ごそうと、生徒会室で話していた。
その帰り、昇降口へ向かい靴箱を開けると、分厚い紙封筒が入っていた。
帰宅後、早速手紙を広げる。見慣れた会長の筆致。文体の語りからは、彼の声がそのまま聞こえてくるようだった。不安と期待で胸をざわつかせながら読み進めると、こう書かれていた。
「僕たちだけ、花火の傍らにある森で過ごそう」
驚いたが、いつも会長と副会長という関係のまま行動するように、LINEで行かない旨を伝えた。結局、私たちは夏祭りを欠席し、会長の示すその場所へ向かうこととなった。
――夏祭り当日。
集合場所に着くと、頭上には青々とした空がいっぱいに広がり、耳には蝉時雨が降り注いでいた。
少し遅れて会長がやってくる。互いに顔を合わせるのは久しぶりで、私は思わず言葉を失った。胸の鼓動が早鐘のように響く。やがて、夜空を彩る花火がぱっと広がり、光が二人を優しく包み込む。
それは、私たちが何気なく過ごしていたはずの毎日を、その瞬間だけ特別な物語にラッピングしてくれるようだった。
そして彼は、深呼吸をしてこう告げた。
「す、すすすっ……しぅ…しゅっきぃ~ん!」
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