ねこ味噌 2012-02-05 12:00:52 |
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「いらっしゃいませ!」
さっきまでは俺とぐだぐだ喋ってた癖に、お客さんが来たとたんしゃんと背を伸ばしてしっかりはっきり挨拶する野口。相変わらずエゴが目につくやつだ。
デキる奴は、大体こんな性格をしている。ま、いい奴だし。許すぞ友よ。
今日の朝一番のお客さんは、黒髪で、顔も小さくて、スタイルも良くて、あの……その、凄く可愛らしい女の子だった。
「すみません、あの、フライドポテロングってありますか?」
10歳位に思われる女の子に聞かれたのは、やはり野口だった。くそぅ、美男子はこういうところで得をするんだ。
野口は不思議そうな顔をして答えた。
「いえ?この店内には」
「そ、そうですか。あうー、また騙されたー……」
額に手を当て、顔をしかめる女の子。野口は興味をもったのか、その子に話しかける。
「あの、差し支えなければ、事情を少し……」
「あー、はいあのぉ、私は少し……人に騙されやすいんですね」
「ふんふん」
相づちを打つ野口。
「それで、いっつも友達にからかわれててぇ。今日も朝に『輪禍!ヘーボン・イレブンでフライドポテロングが売られてるらしいわよ!』って言われて。疑ってたんですけどね……」
とほほ、と首を垂らす女の子。おっと、輪禍ちゃんかな?
「あはは。残念だったね。じゃ、フライドポテロングじゃないけどこれ」
野口は輪禍ちゃんにフライドポテトを手渡した。
「……」俺は無言。
「いいんですか!?これ!?」
「はは。このまま家に帰るのも、悲しいだろ」
「ありがとうございました!」
輪禍ちゃんは嬉しそうに駆け出していった。
はは、ありがとうございました~。そういってにっこりとほほえんだ後、ボソッと冷たい目で俺を見ていった。
「あいつ絶対純粋を装ってるだけだな。この展開5回目だし」
「……いっつもフライドポテトあげるお前が悪いんだろ」
「だって客増えるかと思ったらよォ。あげるしかねーじゃん」
美男子は裏で大抵性格が悪い。
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