静華 2012-10-07 20:35:30 |
通報 |
『第一感』
三月の終わりの春休み。
中学三年の俺、水上弥太(みずかみ やた)は荷物の整理をしていた。受験も無事終え、我が家は一丁目から四丁目なの引っ越しをした。
あまり嬉しくないのが本音だがまぁ、しょうがない。
我が家は五人家族で働きづめの父母、自立していない兄、留学中の兄、そして4月から高校生という俺、そんな感じの構成だ。実をいうと俺以外の二人の兄らはずば抜けて頭が良かったり、運動が出来たりする。反対に俺は才能に恵まれておらず、受験もギリギリだったりする。
俺は部屋に自分の段ボールを置くと窓に目をやった。
「景色がいいな」
二階の日当たりのいい部屋が貰えてラッキーだったかもしれない。
窓を開けると少し冷たいが心地よい風が頬を撫でた。
太陽がお昼頃の住宅街を照らす。新しいわけもなく古くもない家が広がっている。遠くには畑があり、本当に気持ちがよい。ただ…
「あれさえなきゃ、な」
見上げた先には大きな鉄塔。しかも、一つと言わずいくつも建っている。
母さんも最初、ここに住むとき悩んだらしい。
何故なら、『鉄塔が近くにあるところに長く住むと悪い影響がある』という噂を耳にしたのだ。
ま、どうせ迷信だろう。
続く
|