ひより 2013-02-13 22:04:04 |
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それは全米が驚く程の出来事だった。
私も驚いた。それはもう目玉が飛び出るのではないかと思うぐらいに。
何故なら、あのホモ氏、じゃなくて一氏ユウジに彼女が出来たからである。
毎日小春ちゃんとキャッキャウフフしてる、あの一氏ユウジに。
四天宝寺でも有名なホモ、あのホモ氏に。
「ホモ氏って何やねんネーミングセンスあらへん名前付けやがって。しばくぞハゲ」
「だってホモじゃん」
頭上から突然ユウジの声が聞こえたので、とてもびっくりした。
けれど彼女が出来たことに比べると雀の涙程の驚きである。
「隣のクラスの山田さんでしょ?」
「せやけど」
「どうすんのあの子がホモは受け入れられなかったら」
「いやそれは無いと思うで」
「何なのその自信。ムカつく」
ユウジは山田さんのことを信じているのだろう。
例えホモでも受け入れてくれると、信じているのだろう。
山田さんは大人しめな子で、私とは正反対の女の子。
いつの間にユウジと関わっていたのか、本当に解せない。
ユウジはああいう子が好きなのかと一人で勝手に納得しながら寂しさだけが私の心を支配した。
私は山田さんじゃないし、山田さんにはなれない。
「いや、告白してきた時必死やったから」
「へ?」
「どうしても一氏くんと付き合いたいんです!言うてきてん。」
少し口調と声を真似るユウジに思わず吹き出しそうになった。
だって、似すぎてて。山田さん本人が目の前に居るのかとさえ思う。
「何なのそれ、変だね」
「付き合う言うたかて特別何かするわけでもないやろうし、まあええかなーって受け入れてん。」
「ふーん?」
少し暗めの声のトーンで聞こえてきたユウジの声は、可哀想としか思えなかった。
情けなくて、何処か寂しそうで、例えるなら雨の中の捨て猫みたいな。
必死に何かを待ってるけど、震えた声しか出せなくて、儚くて。
「大切にしてあげてね?」
「おん、まあ頑張るわ」
ユウジのことは、多分私の方が知ってる。
オクラが好きなことも、ホモであることも、知ってる。
きっと山田さんより知ってるし、ユウジのことが好きだ。
山田さんより先に告白してたら、私がユウジの隣に居れたのだろうか。
恋人として、誰より近くに。
「今日のお前何やねんきしょいな」
うん、多分無い。
全米が驚いた。
(そして私は泣いた)
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