pelidot 2013-05-18 16:53:19 |
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fortune wars ―運命の宣誓者―暗闇革命終章
OPENING
今から13年前。
五月革命(サルチェ・ラタン)戦争の最前線で戦う、日本普通人(ノーマル)部隊は、超能力者(エスパー)部隊に蹂躙された。
――目の前に仁王立ちしていたのは、まだ18歳くらいの青年だった。
彼は、25歳以上でないと着ることのできない筈の、日本士官学校空軍部の制服である黒いラインの入った白いコートを纏っていた。そして、背中には、普通の高校生にはとてもではないが背負うことのできない、45キロ級機関銃(ライフル)。
黒星改K98式零弌式。
フランス軍の指揮官が、スペイン軍を50人連続で撃ち殺したと言う、伝説の銃。
青年は、不自然な程に無表情だった。
この歳のティーンエイジャーが、他人に心配をかけまいと―それか他の人に感情を察したりされるのが嫌だと言う理由から表情を殺す奴はこの世に幾らでもいる。
だが、彼の無表情は、そんなではなく――まるで、産まれた時から感情と言うものをもっていなかったとでも言うように、表情を少しも見せなかった。
この歳に似合わない程に、いっそ冷徹な程に。
「――あのさ、あんたらが俺たちの周りうろちょろしてると、こっちもやりにくい訳よ。だからここで死んでくんない。―元々あんたたち死ぬ覚悟だったっぽいし、利害の一致ってヤツでしょ?」
途端、全身を粟立つような恐怖が襲った。
――覚悟なんてもんじゃない。自分たちは、覚悟の意味を、少しも解っていなかった。ただ、本当に死ぬなんて有り得ないでしょ、とタカを括っていたのだ。
だが、この青年は違う。何故か、そうと別った。
誰かを殺して自分も道連れにされることを、全く厭わない目。何かをすることに、絶対に後になって言い訳だとか後悔をしないと決めている目。
何故?――きっと、とても大切な人間がいるのだ。彼を、一瞬でも救った誰かが。
青年が、口を開いた。
「あのね、俺の『親』をやってくれてる人が、昔、普通人軍に実の親を殺されてる訳よ。あいつは正直言ってウザいけど、嫌いじゃない訳。で、普通人軍の本部がここって言うから、こんな重い銃背負ってわざわざ殴り込んできたの。了解?」
黒星の銃口が、ゆっくりあがる。よくよく見ると、青年の目は、怒りに燃えているような気さえする。
――目標視認。五メートル先健在。照準完了。
そして、
――発射。
黒星が、火を吹いた。
終わったのは、一瞬だった。
彼の名は伊集院薙沙。特異な能力「戦闘」そして「殲滅」で、15歳にして超能力者軍指揮官に上り詰めた、伝説のごとき能力者だった。
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