櫻ヶ谷 2012-04-30 10:04:13 |
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「凪って手小さいね」
「そうかな?」
「そうだよ。ほら」
静かに精市は右の手のひらを私に向けた。
自然とその手のひらに私の左手が重なり、
私たちの手の大きさの差を示していた。
スラッと長い精市の指は私の指より遥かに長くて
一瞬で 私の手を包み込んでしまいそう。
変に心臓がドキドキ言ってる。
手のひらから精市の体温が伝わってきて
ドキドキを隠そうと俯いた。
「ね?」
「そうだね・・・」
何だか恥ずかしくて目を逸らした。
2人の間に沈黙が続く。
暫くお互いが黙り込んで
ただ、風が窓を叩く音だけが響く。
ふいに握られた手、
顔を上げれば優しく微笑む精市の顔。
どうかした?
と優しい声で尋ねられて顔が熱を帯びていった。
見つめられたらいつも目を逸らせなくなる。
アナタに捕らえられて 逃げられなくて。
「何でも無いよ?」
ぎゅっと握られた手から伝わる精市の温もりが心地よく て。
「なら良いけど」
「精市の手温かい」
「フフっ。そうかな。」
「うん。」
ありがとう
と精市は甘い声で囁いた。
その声が好き。
優しく微笑んで
「凪」って呼ぶ時と同じ声。
しんとした部屋で私の耳に残る精市の言葉
「ずっとこうして居たい。」
耳元で囁かれて耳に残る精市の甘い声。
身体が熱くなって
顔が熱を帯びて。
重なった影や
重なった唇さえも
愛しくて。
全てを 私の物にしたくて。
重なった手。
温かい アナタの手。
-END-
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