Ghost Finder ThomasCarnacki 2022-09-10 22:23:08 |
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きつねは興奮して部活仲間に話すと、その「いい」バイトは話題になり部を越えて、学校中で広まった。そこいらのバイトをするよりも楽で、短時間だ。きつねの周囲にも羽振りがいい者は増え、ある者は依頼人と交渉し、いくつもの石をもらい毎日のように稼いでいるらしい。次第に場所の取り合いになった。
だからきつねはこうして交通の便も悪い廃村に来ているのだ。こんな山奥であれば石を置きに来るやつはきっと少ない。きっと上乗せは5千円、もしかしたら1万円程あるかもしれない。廃村と聞いていたが、そこは村というよりも破れ屋がぽつりぽつりとあるだけだった。どの家も人が住めるような状態ではなく、2階建て部分は崩れ落ち、今では疾うに見なくなったブラウン管テレビや雨に打たれ波打った畳が転がっていた。
きつねは石を置く場所に困った。こんなあばら家に置いて行ったらどこかに紛れてしまう。なにか目立つところに置いた方が良い。いくつか家を見回っていると破裂音が耳に届く。タイヤがパンクしたときのような軽い音ではない。瞬間的に腹の底まで到達する重い音だ。その音は時間を置いて複数回響く。もしかしたら鹿か猪でも獲っているのかもしれない。崩れかけた石垣の隙間から音の方向を見た時、それが大きな間違いだったとわかった。
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