書き込んだ奴を主人公に短編を書く

書き込んだ奴を主人公に短編を書く

Ghost Finder ThomasCarnacki  2022-09-10 22:23:08
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W.H.ホジスンを目指して

  • No.2 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 22:34:28

昏い水底に脈動する薄桃色の有機的な、生きたまま皮を剥いだ何かの肉のように見える塊がいくつも見える。
それらは時折、層の薄い部分から邪な光を漏らしている。一つ一つが常に軽い振幅を繰り返し、互いにぶつかり合い、水面を波立たせる。だが、不気味にその空間は静まり返っていた。

ネザライト騎士は紅く染まったプールサイドに居た。なんてことはない、放課後誰も存在しない学校で入口の金網を乗り越え侵入したのだ。ただ、若さゆえの学生のリビドーをぶつける先として悪いことをしてみたかったのだ。しかし、本物の犯罪をするのにはばかられ、こうして誰にも見られないように校則を破る非日常に浸っていた。

  • No.3 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 22:39:17

プールサイドに足を踏み入れたネザライト騎士が感嘆の声を上げると水面に大きな波を立てる。そうして、靴と靴下を脱いで飛び込み台に座り水面で足を遊ばせる。
水の跳ねる大きな音がやけに大きく響き、飲み込まれた。そして返答するかのように、暗澹たる静謐を湛えていた紅焼けの空間がぐわん、ぐわん、と歪むかのような低い音を立て始めた。

 ぐわん、ぐわん、ぐわん、ぐわん、ぐわん。

 何か巨大なものが呻るような調子で響く。それに気圧されたネザライト騎士が、立ち上がり一歩後ろに下がる。金網を乗り越えた時に着いたのだろうか、薄汚れたペンキで汚れた学生服から携帯電話が落ち、水面に落下した。先ほどよりもさらに大きな音が空間を走る。ぴたりと呻りが止み、辺りを静寂が包み込んだ。絶えず続いていた水面の揺らぎも静止した。

  • No.4 by トリル  2022-09-10 22:39:27

すげえ
ついでにおなしゃす

  • No.5 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 22:41:54

ネザライト騎士が慌て、携帯電話を拾い上げようと手を伸ばす。その腕に、いつの間にか漂って来たのか、先ほどまで水中にあった薄桃色の塊が触れる。何かが千切れるような音がして塊が裂け、次の瞬間にはネザライト騎士の肩から先は消失した。一瞬だけ、呆けたように己の腕を食いちぎったナニカを見つめ、彼はは痛みに絶叫を上げた。

叫びに返答するように、ぐわん、ぐわん、と反響が返ってくる。ぐわん、ぐわん、ぐわん、ぐわ、ぐわ、ぐわ、ぐわぐわぐわ。次第に高くなるそれが、自ら餌になりに来た愚者を嘲笑う声だと、本能的に、ようやくネザライト騎士は気が付いた。

彼が最期に見たのは、周囲を囲む肉塊と、その中からこちらを見つめる昏い光を放つ異形の眼だった。

END~プールサイドの怪物ー

  • No.6 by ネザライト騎士(デスソース)  2022-09-10 22:43:29

おれ校則破らないマンよ

  • No.7 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 22:48:35

マジ?
指導室とかしょっちゅう呼ばれるもんやろ

  • No.8 by ネザライト騎士(デスソース)  2022-09-10 22:50:15

よばれん

  • No.9 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 22:55:31

トリルは行く当てもなくただ原付を転がしていた。腹立ちまぎれに家を飛び出してきたはいいが、暑がりのためサンダル、短パンという軽装で持っているものといえば財布と原付のキーだけだ。スマホを置いてきたのは失敗だったかと思ったが今更おめおめと家に取りに戻る気になれなかった。

アニメや漫画で見るような虫の知らせや予兆などは何もなかった。放課後に自販機で紙パックのジュースを買おうとしていた時に、野球部の4番バッター渾身のファウルボールを頭に受けた。そのボールは頭蓋骨陥没ほど強く当たったわけではなかったがトリルの意識を刈り取り、頭の螺子を数本飛ばすのには十分だった。頭部外傷のため病院に緊急搬送されたまでは良かったが、病室で目が覚めてから、時たま視界に黒い靄が映りこむ。そのことを医師に訴え検査をしたが異常はなく、退院した後、家族にも訊ねたがまだ休む気なのかと学校をさぼるための言い訳としか見なされなかった。

一変した世界にトリルは戸惑う。きっと数日で治るだろうと自分に言い聞かせたがその黒い靄は何日たっても視界にちらちらと横切り、遂には家の中に現れた。トリルは慌てふためいたが、家族からはまた始まったかと、遅れてきた中二病かと言われ湧きだす怒りと動揺を落ち着かせるため、家を飛び出し原付にエンジンを掛けた。家族や警察にばれるとまずいがそれよりも頭を冷やすことが最優先だった。

  • No.10 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 22:57:04

どこに行くかも考えず適当に流していると、トンネルの所まで来てしまったことに気が付く。トンネルに入る直前に急ブレーキをかけ停まることができたのは不幸中の幸いだ。そこはここら辺の若者であれば誰でも知っている肝試しスポットで、車で通ればフロントガラスに手の跡がついていたという話や窓の外からノックされたという噂はいくつもある。

今の自身の状態でここを通る勇気はなかった。明るい時間ならまだしももう陽は落ちかけ薄暗い。どこかひんやりとした空気がトリルの足元から這い上がり、ぶるりと身を震わせた。以前友人たちとふざけてここまで来たことはあったがその時よりも随分と雰囲気が違う。陰気くさいのは相変わらずだが空気が圧し掛かってくるように重く感じる。

  • No.11 by きつね  2022-09-10 23:02:18

てんてれてーんログインした悪者参上

  • No.12 by 鏡音モナ  2022-09-10 23:07:36

なんか色々とすげぇ……

  • No.13 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 23:09:51

原付を押し、向きを変え帰ろうとしようとした瞬間、ハザードランプかひとりでに点滅し、思わず原付から飛び退いた。主を失った原付がアスファルトに音を立てて横たわり、かちりかちりという規則的な音だけが張り詰めた空気に響く。

そのまま放置して帰ってしまいたかったが、家まで徒歩だと何時間かかるのかさえわからない。古びた電話ボックスがトンネルの傍にあることに気が付き、地獄に仏かと駆け寄る。財布に唯一有った小銭を枚数も数えず公衆電話に捻じ込み、家の電話番号を押す。呼び出し音が鳴るだけでなかなか出ない家族に苛立ちを覚えていたが、電話の向こうから受話器を取った音がし、トリルは意識して出した気丈な声で話す。

「今、トンネルのとこで…」

ふっと受話器を当てている耳に湿り気を帯びた息が吹きかけられる。思わず耳を押さえ飛び退いた。全身の毛が逆立つ。放り投げた黄緑色の受話器がゆらりゆらりと揺れるのをじっと息を潜めて凝視する。背中にびっしりと掻いた汗でシャツが張り付く。

  • No.14 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 23:15:50

身体全体で息をする。ぜいぜいという音が自分の喉から聴こえた。逃げようと原付を起こすが、何かに足を取られ強かにアスファルトに身を打ちつけた。身を起こそうとして違和感を感じ、視線を遣る。何かが足に巻き付いている。それはトンネルの中から伸ばされていた。外そうと手を伸ばした瞬間、引き摺り込まれる。慌ててアスファルトに爪を立てるが、意味は為さない。荒い地面に膝や腕が擦れ、爪は割れた。痛みに呻く余裕さえない。

傍にある原付を必死に掴み抵抗するが、トリルを引き摺る力はそれ以上に強かった。滲む視界でトンネルの中を見るが濃い闇が広がっている。

  • No.15 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 23:43:49

殺そうか生かそうか迷うんやけどどっちがいい?

  • No.16 by ハゲコ 絆結星  2022-09-10 23:45:10

へーい

  • No.17 by きつね  2022-09-10 23:46:56

んー、きつね処刑をいっぱいした罰としてころんしてください(嘘だぇす生かしてやれください)

  • No.18 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-10 23:53:10

不意に鋭い破砕音と雷撃音がトンネルの中に木霊した。その音は何度か連続し、その度にトリルの足を掴むものの力が段々と緩んでくるのがわかる。最後の音がトリルの耳に届く頃には黒いものと足の間に隙間ができており、無理やり剥がす。原付を起こすとアクセルを回した。

原付のエンジンを切るのも忘れ、家の中に飛び込む。玄関の壁にぶつかるがその音を聞いて母親が駆け寄ってきた。そんなに慌ててどうしたのかと訊ねられる。答えようとするが声が掠れ、喉が干上がっていることに気が付いた。水を持ってきてもらい一息で飲みきる。飲みなれた水道水が甘露のように思えた。

その足はどうしたの?と母親にそう言われ視線を落とす。膝やら脛に擦り傷ができ血が流れているが、母が指差しているのはトリルの足首だった。そこは何かが巻き付いていた場所だ。赤黒い痣ができ、その痣は細い5つの線が放射状に伸びている。それは手の跡だった。痴呆気味の祖母がすごい早さで神棚に向かい、供えていた塩をトリルに振りかける。祖父が急いでどこかに電話をしているのを呆然と見ているしかなかった。

ENDートンネルの怪異ー

  • No.19 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 20:18:15

そこは廃村だ。来る途中の道は土砂崩れがそのまま放置されており、徒歩で廃村までいくことを余儀なくされ、きつねは慣れない舌打ちをした。おろしたての白のスニーカーに泥が跡を残すたび嫌悪感が募る。

きつねは高校へ進学し一人暮らしを始めたばかりだった。親の監督下から離れた開放感、全てを自分で決められる全能感、自然に金遣いは荒くなって行く。
金はいくらあっても足りない。そんな生活をしていると親からの仕送りの金などすぐに底を突く。どこかの店でバイトしようとも考えたが、楽で格好良くて、遊びと両立する仕事など皆無だった。
やがてきつねの口癖は「金が欲しい」になった。それを聞いていたのか、その「いい」バイトの話は横に座っていた部活の先輩からこっそりと持ちかけられた。

その話の内容はこうだ。廃墟や肝試しスポットにある物を置いておき、2週間後に回収する。そしてそれをある人に渡せば1万円ゲット。こんな割のいいバイト、お前だから教えるんだと先輩に言われると自然と首を縦に振っていた。

バイトの話を受けた後でもしかしてヤクザ関係かもしれないと後悔していたが、面接場所として指定された駅前のベンチに行っても相手は現れず、予定時刻丁度にショートメールでベンチの下に置いてある石を廃墟に置いてくるように指示があっただけだった。

  • No.20 by ハゲコ 絆結星  2022-09-11 20:30:15

おれおれおれぇ!

  • No.21 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 20:41:52

その石は河原に落ちているように角は丸く削られており、藁か何かを編んだ縄で十字に縛られていた。丁寧なことに持ち手もある。縄を解いて河川敷に転がしておけばすぐにどこに行ったか分からなくなりそうなほど特徴の無い石だ。きつねはどこか気持ちの悪さを感じたが、その石を掴むとジーンズのポケットに捻じ込んだ。

先輩の話は本当だった。そこが地元でもないきつねには肝試しやら廃墟に心当たりがなく、仕方なくネットで事故物件検索サイトとして有名な大島てるで調べた。案外政令指定都市にはそんな物件はごろごろあるようできつねが住む近くのアパートもその地図に載っている。近所だしそこでいいかとそのアパートに行くと築50年は優に経過した寂れたアパートだ。入居している人も少ないのか階段は錆びており風も吹いていないのにどこかで金属音が響いている。きつねは気味悪さを感じ、アパートの入口に一歩だけ足を踏み入れ、石をブロック塀の傍に置いて逃げ帰った。

2週間後、きつねは依頼人から石の引渡の場所が記載されているメールを受取りその石の存在を思い出す。置き去りにした石を持とうとしたとき違和感を感じる。こんなにこの石、重かったか?ポケットに前のように入れる勇気もなく持ち手の紐をつまんだ。

依頼人に指定されたのは面接の時と同じベンチだった。そのベンチの下に石を置くと次は駅の反対側にある電話ボックスに向かうようにメッセージが飛んでくる。渋々その電話ボックスに行き、台の裏を見ると封筒が張り付けられている。その中には1万2千円が入っていた。事前に言われていた金額よりも2千円も多く慌てて依頼人にメールすると、いい仕事をしてくれたため色を付けたと返事があった。そしてまた頼むと。きつねはその言葉にすぐさま了承の返事をしていた。

  • No.22 by きつね  2022-09-11 20:43:26

うひょー

  • No.23 by 鏡音モナ  2022-09-11 20:57:55

すげぇなぁあ(゜ロ゜)

  • No.24 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 21:06:04

きつねは興奮して部活仲間に話すと、その「いい」バイトは話題になり部を越えて、学校中で広まった。そこいらのバイトをするよりも楽で、短時間だ。きつねの周囲にも羽振りがいい者は増え、ある者は依頼人と交渉し、いくつもの石をもらい毎日のように稼いでいるらしい。次第に場所の取り合いになった。

だからきつねはこうして交通の便も悪い廃村に来ているのだ。こんな山奥であれば石を置きに来るやつはきっと少ない。きっと上乗せは5千円、もしかしたら1万円程あるかもしれない。廃村と聞いていたが、そこは村というよりも破れ屋がぽつりぽつりとあるだけだった。どの家も人が住めるような状態ではなく、2階建て部分は崩れ落ち、今では疾うに見なくなったブラウン管テレビや雨に打たれ波打った畳が転がっていた。

きつねは石を置く場所に困った。こんなあばら家に置いて行ったらどこかに紛れてしまう。なにか目立つところに置いた方が良い。いくつか家を見回っていると破裂音が耳に届く。タイヤがパンクしたときのような軽い音ではない。瞬間的に腹の底まで到達する重い音だ。その音は時間を置いて複数回響く。もしかしたら鹿か猪でも獲っているのかもしれない。崩れかけた石垣の隙間から音の方向を見た時、それが大きな間違いだったとわかった。

  • No.25 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 21:20:58

廃村とはいえ日本の田舎らしい風景が広がる中、その者の風貌は場違いに思えた。劇場から飛び出してきたようなベネチアンマスクに長いコート。銃かと思っていたものの先には大きな銛がついている。

一瞬話しかけようとしたがすぐに足が竦んだ。

その者は柱に括られたロープに繋がれた鹿に向かって銛を撃つと貫通させ、じりじりと引き寄せていく。鹿は必死で抵抗しようとしたが巻き取られていく鎖には勝てなかったらしい。地に伏したそれに再度銛を刺すように撃ちこむとその身体を軽々と持ち上げる。背中に深々と刺さった銛は体内を抉りながら口を出口と決めたらしく、その鈍色を覗かせた。悲鳴と共に抵抗するように出鱈目に振り回されていた手足は動きを止めた。小さく痙攣する身体は脳からの電気信号が絶えたことにまだ気が付いていないようだ。

その光景を作った者の口角は上がり、楽しんでいるのがきつねには手に取るようにわかった。

きつねの足元で砂利が鳴り、喉がか細く音を立てる。その者と視線がぶつかった。周囲に視線を遣るが遮蔽物になりそうなものは自分とその男の間にある石垣を除けば、ないに等しい。銃を向ける男の鋭い眼光にきつねは吸い込まれた。忍び寄るかのような寒さを感じ、転げるように廃村から逃げ帰った。

きつねは廃村から一人暮らしのアパートに帰った。ポケットに入れていた石はどこかに落としたのかなくなっていたことが救いと言えた。

しかし、鏡や窓ガラスに映った自身の影や物音に怯え、あの日から1ヶ月経った今も、友人の家に頼み込んでしばらく身を置かせてもらっている。その友人と久しぶりに部活に顔を出したときその話を投げかけられた。

「―――おい、聞いたかよ。あのハナシ…」

「…なんだよ。もったいぶんな」

「お前がやってたバイトの話。あのバイトして行方不明になった奴多いんだぜ」

友人は何名もの名前を挙げていく。他の友人は羽振りが良かったからどっか海外で豪遊でもしてるんじゃないかと茶化す。

あの日から2週間後、依頼人からのショートメールは一度届いていた。しかし返信をする勇気が出ず、そのまま放置したがその後依頼人からメールも電話もない。

 

──依頼人に死んだと思われた?

──死んでもいいとおもわれていた?


きつねは1人、身を凍えさせた。

ENDー「逝い」バイトー

  • No.26 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 22:01:25

鏡音モナは肝試しのために廃墟に来ていた。
ホテルが廃業し、その後は取り壊しもされずその姿のまま現在まで残っている。3階建ての2つの建物を繋げており、敷地も広い。管理もされていないため草木は生い茂り、壁には蔦が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。その外装を見て思わず息を飲んでいた。

その日、仲のいい1人の友人の親が所有する別荘に休みを利用して、数人で遊びに来ていた。箸が転んでもおかしい年頃の者同士、ふざけたり、恋バナしたりと話題には事欠かない。しかしここでモナの想定しない方向に話は転がる。友人のひとりが肝試ししようと言い出したのだ。モナは嫌がったが、多数決となるとその意見は紙のように軽く吹き飛ばされる。

いるのかいないのか興味すらない神に祈る。

何も起こりませんように。

  • No.27 by きつね  2022-09-11 22:07:16

きつねをちんでもいいと思うやつなんてあいつしかいねぇ…
はまちさんッ!(謝れ)

  • No.28 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 23:09:58

モナを置いて友人たちはどんどんと中に進んでいく。ライト代わりにしている携帯を強く握りしめた。そのとき先を歩いていた友人たちが一斉に叫ぶ。その声が建物に幾重にも反響した。モナが何が起こったのか聞く暇もなく、半泣きの表情を浮かべた友人に背を強く押され先ほどまで慎重に歩いていた道を走り戻った。

無事に廃墟から出ると、全員がその場にへたり込む。叫んでいた友人らが口々に誰かいたやら、走っていたと声を震えさせて言う。腰を下ろしたアスファルトから冷気がじわじわと伝わってきて自然と身震いをしてしまう。モナがもう帰ろうと言い出すと、全員がその言葉に同調した。

一息つくと友人たちは先程の恐怖を振り切るかのように態とらしい明るく大きな声で話し出す。本当に幽霊だったのかな。いや、きっと自分たちのように肝試しをしにきた人たちかも。不良だったらどうしよう。殺人鬼が死体捨てに来てたりして。それかサバゲーでもしてたんじゃないの。BB弾が飛んでこなくてよかった。
そう言いあう友人の中で1人、先ほどよりも真っ白な顔をしている者がいる。

「…別荘の鍵…がない…」

そう小さな声で言った。

その場に沈黙が満ちる。それぞれの視線があちこちに散らばった。

鍵がないと今日泊まる別荘に入れない。鍵を落とした友人を責めることもできない。かと言ってあの廃墟の中に探しに行くという勇気も持てない。そんなところだろう。

 

  • No.29 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 23:20:10

「じゃあ、私、探しに行ってくる!」

モナがそう言いだすのも仕方なかった。まだ雪は降っていないが外で野宿するには寒い。

鍵を持っていた友人にキーホルダーの形状などを確認する。暗い所で光るキーホルダーだ。まだ見つけやすい。一緒に行くと言う友人たちをモナは押しとどめる。30分経っても戻らなかったら警察に連絡してと伝え、懐中電灯を握りしめた。1人廃墟に再び足を踏み入れる。女は度胸。そう頭の中で反芻させた。

エントランスはひっそりと静まりかえっている。空気は淀み、埃っぽい。先ほどは友人の背中と足元ばかりを見ていたため中がこんなに荒れていることに気が付かなかった。

ガラス類は割られ壁には落書きがいくつもある。忍び込んだ誰かが壊したのか猫足の椅子は背もたれは割られ、横たわっていた。この広い空間のどこかに鍵は落ちているはずだ。

床を懐中電灯で照らす。見落としがないように慎重に見るが見つからない。段々と焦れてくる。背にじっとりとした汗が伝った。

自分の背後から音が聴こえる。水の落ちる音。慌てて振り返るが誰も居ない。きっと老朽化でどこかのパイプから水漏れがしているのかもしれない。そう自身を納得させる。

  • No.30 by 鏡音モナ  2022-09-11 23:21:42

おおおおおおお( ゚∀゚)

  • No.31 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 23:27:31

再び鍵を探すため正面を照らしたとき、思わず叫びかけた。

人がいる。叫びかけた声を飲み込む。お化けじゃなくて人だ。足がある。そのことにほっとし、話しかけようとしたが躊躇した。体格などから女性でまだ若いとわかる。しかしフードを深くかぶりその奥には仮面が覗いた。子どもが無茶苦茶に書き殴ったような仮面だ。手にナイフを持ち、刃から何かが滴っている。

思わず体が後ろへ退いた。

目の端で別の何かがゆらりと動く。男だ。目の前の女と同様にフードを被り表情は窺えない。その手はナイフをくるりと回して弄ぶ。

背後から叫び声が響く。金切り声だ。人があげたものではない。もっと動物的だ。思わず耳を塞ぐが声はすぐに止んだ。

その声の方向から先ほどとは別の男が現れる。何か重い物を引き摺っていた。その引き摺られているものの四肢が僅かに痙攣している。きっと声の主はこれ・・だ。

横に逃げようとするが、まだ仲間がいたのか阻まれる。遂に囲まれてしまった。

静寂が耳に痛い。

じわじわと追いつめられる。四方を囲まれ身動きもできず、ただ身体を小さくする。男たちのフードの中を覗きこむ勇気はない。ただナイフの鈍い光を見るしかない。そのことにモナは叫び出してしまいたかった。

  • No.32 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-11 23:37:29

「あれ?さっきのお姉さんだよね。もどってきたの?」

この場に不釣り合いな子どもの声が響く。ライトを向けると少し眩しそうに目を細めた

「――か、ぎ…鍵、なくしたの」

モナは引き攣った声で紡いだ。

「鍵?…あぁ、これ?」

少女の手にはぼんやりと暗闇で光る人形が見えた。それには見覚えがあった。別荘の鍵だ。小刻みに首を何度も振る。
そのモナの返事を見て、少女はモナを取り囲む女の横をすり抜けて近づいてきた。


「はいどうぞ」

公園で転がってきたボールを渡すような軽さで少女はモナにその鍵を渡した。手の平に落とされた鍵は震えあがるほどに冷たい。

 

「こんどはなくさないようにね」

 

そう言ってモナに少女は手を振る。目を合わすこともできず、小さく震える声で礼を言うと少女の口角が上がるのが見えた。モナを囲んでいた1人が1歩横にずれる。その先には出口がある。その不気味さを振り払うように、そこ目掛けて駆け出した。振り返る余裕もない。

外に出ると何かにぶつかる。一緒にその場に転げ慌てて立ち上がった。暗くて一瞬わからなかったがモナが待つように言い含めた友人たちだ。モナが心配でここまで来たらしい。急いで友人たちの手を取り廃墟から離れる。

「無事でよかった…」

友人たちが口ぐちにそう言う。時計を見たが1人廃墟に入ってから15分も経っていない。しかしあれは実際にあったことなのだと握りしめた鍵の冷たさが語った。

ENDータイトル思いつかねぇー

  • No.33 by むしくいぼんぐり  2022-09-12 01:48:15

なるほどな。お前は俺の完全上位互換というわけかちくしょう

  • No.34 by 鏡音モナ  2022-09-12 17:43:10

すごすぎワロタ

  • No.35 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-13 18:48:48

ハゲコは廃校になった小学校の職員室ににいた。

肝試しや廃墟巡りをしに来たわけではない。受験でやってきて、次の日が休みのため観光でもしようとビジネスホテルの宿泊予約をしたのだ。予定よりもその日の予定が早く終わったためホテルのチェックインを済ませたが、まだ空は明るく、ふらふらと周囲を散歩していたときその建物が目に留まった。

そこは自分が通っていた小学校とは似ても似つかないがどこか懐かしさを感じる小学校だった。全てが身長の低い子ども用に作られているからか自分が巨人になったように思える。見学してもいいか訊ねようと職員室のプレートが掛かっている部屋に入ったが、案の定誰も居らず、埃を払うこともせずにそこにあった椅子に何となく腰かけていた。その椅子の上で考えこんでいると不思議な気分になる。この時を止めてしまった空間がそう思わせるのかもしれない。椅子の座面に行儀よく置かれていた石は十字に結ばれ、となりのトトロに出てきた包みのようでかわいらしい。それを掌で転がしながら思い起こす。

  • No.36 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-13 18:53:43

何故かハゲコの人生が走馬灯のように駆け廻る。取り立てて悲壮で辛い過去ではなく、むしろ有り触れた平凡な人生だ。理不尽に殴られたこともない。それなのにこの椅子で考えているとすべてが憎く思えてしまうのだ。

黒のスニーカーの先で床に転がっている小石を蹴った。校舎の玄関でスリッパか何かに履きかえるべきかと思ったが、既に誰かの靴跡があり、廊下も土埃が溜まっていたため土足のままでも大丈夫だろうと靴のまま上がった。

目の端で何かが動いた。それは廊下を駆け抜けていく。ハゲコの膝よりも低い影だ。きっと雨風を凌ぐために入り込んだ猫か犬だろう。

少ししてホテルに戻ろうと思ったが、折角なのだから校舎内を見て回ろうと決め職員室を出た。廊下を歩きながら教室を1つ1つ覗く。小さな机には誰かの苗字が掘られていたり、鉛筆で落書きをした跡までまだ残っている。それはハゲコが施したものではないが、どこか心の奥に仕舞い込んだ懐かしさを擽られているような気分になる。美術館で作品を眺めているようにゆっくりとした足取りで歩いた。

3年生の教室がある階に行ったときハゲコはその光景を見る。

廊下で赤子程の大きさの生き物が何かに張り付いている。張り付かれている者は剥がそうと必死にもがくが、バランスを崩し倒れるまでそれは離れなかった。その傍に立っていた者もいるが、助け起こすこともなく、倒れたそれに更に鎌を振り下ろしている。何度も下ろされる凶器をハゲコは呆然と見続けた。

我に返り後ずさったのが悪かった。靴底が床に当たり音を立て2対の眼がハゲコを捉える。赤子程の化け物はハゲコに向かって歯を剥き出しにし威嚇をする。鎌を持った者は人間のように思えたが腹には大きな穴が開いており、その異様さを際立たせた。

  • No.37 by ハゲコ 絆結星  2022-09-13 19:06:38

大好き

  • No.38 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-13 19:21:44

走る。

脇目を振る余裕すらなく足を動かした。

背の低い化け物は足が速く、ハゲコに向かって飛び掛かる。反射的に躱すことには成功したが、ハゲコの進行方向を阻む形になってしまう。反対の方向に走ろうと踵を返す。しかし後ろからは先ほどの化け物のこちらに向かってくる足音が響いていた。咄嗟に手に持ったままだった石をそれ目掛けて投げつける。当たったのを確認し、化け物の横を通り過ぎ階段を駆け下りた。

階段を下りた先で、床板の隙間に引っ掛かり勢いよく前に倒れる。頬を床に強かにぶつけ、視界が涙で歪んだ。
膝と掌は擦れて熱を持っている。遠くから聴こえてくる足音に、慌てて近くのロッカーに入った。

何年も使われていないであろうロッカーの中は黴と埃の臭いが鼻を衝く。荒くなる息を必死に抑える。ハゲコが倒れた音が聴こえたのだろう。鎌を持った化け物が辺りを見回している。

ハゲコは化け物が早く立ち去ってくれるよう祈ったが、化け物はロッカーを順に確認しだした。錆びた扉が独特の金属音を立て開く度、体中の毛穴から汗が吹き出す。ハゲコは恐怖に慄き蹲ることも、発狂し泣き喚くこともできた。しかし不思議なことにこんな状況になって頭の中が冴え冴えとしてきているのを感じてた。化け物がハゲコが身を隠すロッカーに近づいてくる頃、ハゲコの意思は1つに決まっていた。

  • No.39 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-13 19:26:37

ロッカーの扉に化け物の手が伸びた瞬間、勢いよく扉を開け放つ。当て身に近い。油断をしていた化け物が怯んだ隙に廊下をがむしゃらに走った。入ってきた玄関どころか、学校の敷地の外に出た後も後ろを振り返るどころかスピードを緩めることさえできなかった。

ハゲコが飛び込むようにして入ったホテルの従業員は目を白黒させている。従業員がこわごわ差し出してきた真っ白いタオルを受け取りながら、ハゲコは自分の格好を確かめた。ポケットに入れっぱなしの財布とスマホが無事だったのは不幸中の幸いだ。

シャツとジャケットは汗でじっとりと濡れ、背中に張り付いているのが気持ち悪い。顔に張り張り付いた髪を雑に掻き上げた時、ガラスに映った自身の目が鋭く光っていることに気が付いた。

ENDー小学生に戻りてぇなぁー
 

  • No.40 by ハゲコ 絆結星  2022-09-13 20:35:10

>>39そうだなぁ、小学生は良いよなぁ

  • No.41 by 玲亜!  2022-09-17 16:20:23

あー

  • No.42 by くぁwせdrftgyふじこlp  2022-09-17 18:11:50

初見

  • No.43 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 00:19:38

ホラーのネタが尽きたんやが

  • No.44 by むしくいぼんぐり  2022-09-18 00:26:32

>>43 ホラーやめて。どうぞ。

  • No.45 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 16:47:49

医者っていったい、なんなんだ。
これで何度目か、頭に沸いたその問いは、目線の先、病室の窓から見える青空に消えていく。
「ちょっと、先生」
ぼーっと空を眺めていたむしくいぼんぐりは、はっとして横を向く。
「あっはい」
見ると、ベッドに寝転ぶ患者が怪訝そうな表情を浮かべていた。
「なに……オレの体になんかあったの」
どうやら、むしくいぼんぐりの様子を見て、不安を感じたようだった。
「いえ」
笑顔を作り、ぼんぐりは手を振る。
「ちょっと寝不足が続いてまして」
「寝不足? おいおい、あんたオレの主治医だろ。そんなことで、へたな仕事してもらっちゃ困るよ。ちゃんと寝てくれよ」
「す、すいません」
謝って頭を下げるも、そんなこと言われたところで、どうしようもない。と心の中で呟く。研修医は、というよりも、医療現場は激務だ。朝から晩まで働き詰めで、休む暇もない。
指導医には毎日のように怒られ、看護師からは監視され、家に帰るのはいつも夜の11時以降。軽くシャワーを浴びて気絶するように眠れば、朝食を食べてすぐに家を出る。土日には休みをもらえるが、担当患者に何かがあれば、すぐに呼び出しが来る。いつ何時でも、気が休まることがない。
さらに、一週間に一度は夜間当直もあり、その日は寝ることができず、数時間の仮眠をとって、いつものように仕事を行う。研修が終わり医者となると、これよりもさらに過酷な職場環境になるというのだから、笑える話ではない。

  • No.46 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 16:51:00

給料は、生きるのに困らない程度にはもらっているが、その労力と見合っているとはいいがたい。
まあ、その昔に研修医の低報酬が問題となり、2003年に法律が作られたからそれだけもらえているが、それ以前は月5万円なんていう、異常な報酬がまかり通っていたのだ。それと比べれば、恵まれているといえば、恵まれているのかもしれない。

しっかり眠って、ちゃんと仕事をしてほしい。患者はみんなそう思うだろうし、病院で勤務する医者や研修医たちだって、そうしたいと思っている。だが、そんなことをすれば、大病院は成り立たないのだ。

しかしながら、ぼんぐりにとっては収入も激務も、たいした不満ではなかった。もとより、こういう職場だということは熟知していた。
何よりつらかったこと、それは、ここで働き出し、いろんな人間と接していくほど、医者というものの本質が見えなくなったからだ。

病院は一企業だ。赤字が続けば倒産するし、経営が大事なことはよくわかる。ただ、ここには患者を札束で数えるような、そんな損得勘定が見え隠れする。本来なら6人ほどが入れる部屋を、わざわざ一人用の豪華な個室にして、政治家や社長あたりを相手にし、お礼金なんかをもらえば、名のある教授が優先的に手術を行う。組織としての構造も最悪だ。常に上の人間が幅を利かせ、すべてを決めている。一番の出世への近道は、手術をすることではない、ゴマをすることだ。

  • No.47 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 16:56:37

派閥争い、出世争い、圧力や理由のないイジメ。そして、そんな中を着実に順応していっている自分。いつの間にか、愛想笑いがうまくなった。会話の中で、他人を持ち上げるのがうまくなった。必要最低限の行動で、患者を対処するのがうまくなった。

そのつど、見えなくなっていった。自分の理想とした医者の姿が。昔は、確かにハッキリと見えていた。だがいまは、すりガラスの向こうにあるかのようにぼやけている。そのぼやけた輪郭を目でなぞるたび、思う。

 医者っていったい、なんなんだ。

 午後10時。仕事が終わり、更衣室で私服に着替え、薄暗い廊下を歩く。そのとき、すぐ近くの病室から扉越しに話し声が聞こえた。

「医療費のことなんですけど」

子供の声だ。
確かここは、難病の少年が使っている個室だ。長い間、手術できる人間が見つかっていなかったが、最近になって現れて、ここで手術をしたと聞いた。どうやらその費用について話し合っているようだった。

「400万円ですよね」

少年から発せられたその金額を耳にした瞬間、ぼんぐりの体は硬直させ、ゆっくりと病室の方を振り返った。400万円? そんな金額を請求したのか。確かに、病気はこの病院ではどうしようもないほどの難病だった。それでも、ありえない金額だ。金持ちに対しての要求ならまだわからなくもないが、少年の家は普通の家庭だ。簡単に払える金額ではない。

「ああ、そうだ」

手術を担当した医者らしき男の声が聞える。当然のように答える医者の声を聴いても、ぼんぐりにはもう嫌悪感すら湧いてこなかった。あったのは、医者という職業に対する諦め。
難病の子供を救える腕はあっても、何よりも大事な人としての心がない。もうどうでもよくなった。自分の行く末も、なにもかも。

急にどっと体が重くなった気がした。

  • No.48 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 17:34:42

さっさと帰ろう。そう思い、踵を返したそのとき、

「だが、それは普通の患者の場合だ」

ぼんぐりは足を止め「え?」と思わず少年と同じ言葉を重なるように言った。

「キミと私は友達だろ」

フっと笑う声が聞えた。「助け合うのが友達ってやつだ、金は要らない」

頭が真っ白になった。ドン、と脳天から衝撃がきたようだった。病室の中では二人が話を続けているが、ほんぐりの耳には全く入ってこない。足元から湧きたち全身へとめぐる、ろくでもない人間と決めつけていた自分への恥の感情と、謎の興奮。それがぼんぐりの体温をぐっと上げ、耳を赤くした。

不意に扉が開き、医者らしき男と目があった。男はぼんぐりをみて「なにか?」と聞いてきたが、

「いえ、なにも……」

ぼんぐりが茫然とそう答えると、男は不思議そうに眉を動かした後、背を見せて廊下を歩いていった
自分の理想としていた、医者の背中姿が、確かにそこにあった。

「あの!」

 医者が数歩進んだところで、ぼんぐりは呼び止めた。医者が足を止めてこちらに振り返かえると、ぼんぐりは息を呑んでいった。「あの……な、名前を、教えてくれませんか」

「名前」

医者は怪訝そうな表情を浮かべた後「間だ。間黒男。医者をしている」と答えた。

「間さん。いや、間先輩」

「せん……ぱい?」

 間は首をかしげる

「はい、そう呼ばせてください」

 医師免許を持ち、ぼんぐりが先生と呼ぶ医者はたくさんいる。でも、それら有象無象と間は違う。自分の求める医者像の先を行く人間だ。それを敬いたかった。

  • No.49 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 17:37:57

「まあ、悪い意味はないんだ、好きにするといい」

「ありがとうございます。それで先輩、一つ聞きたいことがあります」

ぼんぐりは目を真剣なものにして問う。「医者っていったい、なんなんでしょうか」いままで、どれだけ考えても出なかったその答え。きっと、間は明確な答えを持っていると思った。だが、

「さあ、わからん」

間の口から出たのは、あまりにも適当なものだった。

「分からないって……いや、先輩ならわかるはずです。先輩は誰よりも医者です。だったら、医者としてあるべき、確かな答えを――」

「わからんと言ったらわからん」

間はぶしつけにぽんぐりの言葉を遮り、続けていった。「理由だとか意味だとか、考えたことがない。ただ、患者を治療し続けた。そしたら、いつの間にか医者になっていただけだ」

 いつの間にか……医者に……。

ぼんぐりはぐっと全身に力を入れ「なるほど」と一つ呟いた。

「悪いな、分かりやすいな答えじゃなくて」

「いえ、とてもいい答えだったと思います」

目を閉じ、ぼんぐりは深々と頭を下げた。「ありがとうございます」

「礼には及ばない。失礼する」

間がその場から離れる気配を感じても、ぼんぐりは頭を上げなかった。その状態のまま、ぼんぐりはある確信を得ていた。自分の描く理想への道のりは、いまだ見えない。でも、その先に彼がいる。学ぶんだ。先輩から……僕が医者になるための、大切なものを。

その後、ぼんぐりが間の助手として行動を共にするのは、研修が終わった3か月後のこと。 

ENDーブラックジャックによろしくを読んだら面白かったのでー
 

  • No.50 by きつね  2022-09-18 17:45:59

むしくいじゃないのか

  • No.51 by Ghost Finder ThomasCarnacki   2022-09-18 17:47:31

むしくいはしょっちゅう漢字に変換されるので書きづらかった

  • No.52 by きつね  2022-09-18 17:49:37

そうなのね

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