Ghost Finder ThomasCarnacki 2022-09-10 22:23:08 |
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トリルは行く当てもなくただ原付を転がしていた。腹立ちまぎれに家を飛び出してきたはいいが、暑がりのためサンダル、短パンという軽装で持っているものといえば財布と原付のキーだけだ。スマホを置いてきたのは失敗だったかと思ったが今更おめおめと家に取りに戻る気になれなかった。
アニメや漫画で見るような虫の知らせや予兆などは何もなかった。放課後に自販機で紙パックのジュースを買おうとしていた時に、野球部の4番バッター渾身のファウルボールを頭に受けた。そのボールは頭蓋骨陥没ほど強く当たったわけではなかったがトリルの意識を刈り取り、頭の螺子を数本飛ばすのには十分だった。頭部外傷のため病院に緊急搬送されたまでは良かったが、病室で目が覚めてから、時たま視界に黒い靄が映りこむ。そのことを医師に訴え検査をしたが異常はなく、退院した後、家族にも訊ねたがまだ休む気なのかと学校をさぼるための言い訳としか見なされなかった。
一変した世界にトリルは戸惑う。きっと数日で治るだろうと自分に言い聞かせたがその黒い靄は何日たっても視界にちらちらと横切り、遂には家の中に現れた。トリルは慌てふためいたが、家族からはまた始まったかと、遅れてきた中二病かと言われ湧きだす怒りと動揺を落ち着かせるため、家を飛び出し原付にエンジンを掛けた。家族や警察にばれるとまずいがそれよりも頭を冷やすことが最優先だった。
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