Ghost Finder ThomasCarnacki 2022-09-10 22:23:08 |
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さっさと帰ろう。そう思い、踵を返したそのとき、
「だが、それは普通の患者の場合だ」
ぼんぐりは足を止め「え?」と思わず少年と同じ言葉を重なるように言った。
「キミと私は友達だろ」
フっと笑う声が聞えた。「助け合うのが友達ってやつだ、金は要らない」
頭が真っ白になった。ドン、と脳天から衝撃がきたようだった。病室の中では二人が話を続けているが、ほんぐりの耳には全く入ってこない。足元から湧きたち全身へとめぐる、ろくでもない人間と決めつけていた自分への恥の感情と、謎の興奮。それがぼんぐりの体温をぐっと上げ、耳を赤くした。
不意に扉が開き、医者らしき男と目があった。男はぼんぐりをみて「なにか?」と聞いてきたが、
「いえ、なにも……」
ぼんぐりが茫然とそう答えると、男は不思議そうに眉を動かした後、背を見せて廊下を歩いていった
自分の理想としていた、医者の背中姿が、確かにそこにあった。
「あの!」
医者が数歩進んだところで、ぼんぐりは呼び止めた。医者が足を止めてこちらに振り返かえると、ぼんぐりは息を呑んでいった。「あの……な、名前を、教えてくれませんか」
「名前」
医者は怪訝そうな表情を浮かべた後「間だ。間黒男。医者をしている」と答えた。
「間さん。いや、間先輩」
「せん……ぱい?」
間は首をかしげる
「はい、そう呼ばせてください」
医師免許を持ち、ぼんぐりが先生と呼ぶ医者はたくさんいる。でも、それら有象無象と間は違う。自分の求める医者像の先を行く人間だ。それを敬いたかった。
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