Ghost Finder ThomasCarnacki 2022-09-10 22:23:08 |
通報 |
モナを置いて友人たちはどんどんと中に進んでいく。ライト代わりにしている携帯を強く握りしめた。そのとき先を歩いていた友人たちが一斉に叫ぶ。その声が建物に幾重にも反響した。モナが何が起こったのか聞く暇もなく、半泣きの表情を浮かべた友人に背を強く押され先ほどまで慎重に歩いていた道を走り戻った。
無事に廃墟から出ると、全員がその場にへたり込む。叫んでいた友人らが口々に誰かいたやら、走っていたと声を震えさせて言う。腰を下ろしたアスファルトから冷気がじわじわと伝わってきて自然と身震いをしてしまう。モナがもう帰ろうと言い出すと、全員がその言葉に同調した。
一息つくと友人たちは先程の恐怖を振り切るかのように態とらしい明るく大きな声で話し出す。本当に幽霊だったのかな。いや、きっと自分たちのように肝試しをしにきた人たちかも。不良だったらどうしよう。殺人鬼が死体捨てに来てたりして。それかサバゲーでもしてたんじゃないの。BB弾が飛んでこなくてよかった。
そう言いあう友人の中で1人、先ほどよりも真っ白な顔をしている者がいる。
「…別荘の鍵…がない…」
そう小さな声で言った。
その場に沈黙が満ちる。それぞれの視線があちこちに散らばった。
鍵がないと今日泊まる別荘に入れない。鍵を落とした友人を責めることもできない。かと言ってあの廃墟の中に探しに行くという勇気も持てない。そんなところだろう。
|