Ghost Finder ThomasCarnacki 2022-09-10 22:23:08 |
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走る。
脇目を振る余裕すらなく足を動かした。
背の低い化け物は足が速く、ハゲコに向かって飛び掛かる。反射的に躱すことには成功したが、ハゲコの進行方向を阻む形になってしまう。反対の方向に走ろうと踵を返す。しかし後ろからは先ほどの化け物のこちらに向かってくる足音が響いていた。咄嗟に手に持ったままだった石をそれ目掛けて投げつける。当たったのを確認し、化け物の横を通り過ぎ階段を駆け下りた。
階段を下りた先で、床板の隙間に引っ掛かり勢いよく前に倒れる。頬を床に強かにぶつけ、視界が涙で歪んだ。
膝と掌は擦れて熱を持っている。遠くから聴こえてくる足音に、慌てて近くのロッカーに入った。
何年も使われていないであろうロッカーの中は黴と埃の臭いが鼻を衝く。荒くなる息を必死に抑える。ハゲコが倒れた音が聴こえたのだろう。鎌を持った化け物が辺りを見回している。
ハゲコは化け物が早く立ち去ってくれるよう祈ったが、化け物はロッカーを順に確認しだした。錆びた扉が独特の金属音を立て開く度、体中の毛穴から汗が吹き出す。ハゲコは恐怖に慄き蹲ることも、発狂し泣き喚くこともできた。しかし不思議なことにこんな状況になって頭の中が冴え冴えとしてきているのを感じてた。化け物がハゲコが身を隠すロッカーに近づいてくる頃、ハゲコの意思は1つに決まっていた。
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