Ghost Finder ThomasCarnacki 2023-01-08 17:08:04 |
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爆風で煽られながらも寝返りを打って、殴られた拍子に飛んでいったインカムのもとへ這いずった。奇跡的に壊れてはいなかった。
再装着してチャンネルを変更。本部の発令所に繋ぐ。司令が作戦行動を監督しているはずだ。
「こちら……フォックストロット・ツー。対象が、一名逃走。半蔵門線を通って……」
うつらうつらしながら、なんとか言葉を紡いだ。出血性ショックなんて珍しくもない。
「徒歩で、渋谷方面に向かいました」
ハゲコは至近距離で爆発に巻き込んでやったが、自力で逃走できる程度の傷しか与えられなかった。少しずつだが眠気が和らいできた。それでも血に蓄えられていた熱がみんな体外に出ていってしまったのはどうしようもなく、猛烈な寒さに身震いさせられる。
『現時刻をもって掃討作戦を終了。部隊はこちらで撤収させる。お前はホームで回収班を待て』
「…了解です」
『オーバー』
『こちらフォックストロット・ワン。聞こえるか?』
司令本部との通信を終了したところで、ちょうどはまちが通信を入れてきた。
「感度良好。どうした?」
『お前をすっ飛ばして司令部から撤退命令が出た。何かあったのか?』
きつねは、自分の体を見下ろしてみた。
左腕は上腕を粉砕骨折。右肩と右脇下に深い刺し傷。右大腿に銃創。鼻骨骨折。右頬と左側頭部に広範囲の裂傷。出血量は……血の海と化した周りを見る限りだと、一リットルより少し多いくらい?
以上を今までの経験から総合的に判断すると、
「問題ない」
即答できるくらいの平常運転だ。
「ちょっと面倒な奴が逃げたが、情報部が追ってる。俺も元気だよ」
『そうか。こっちも怪我人一人いない。お前もとっとと帰ってこいよ』
「気遣い、感謝する」
『オーバー』
きつねは自分の持つグロック・マークスマン・バレルの鋭いライフリングが、明滅する光に照らされて白く輝いた気がした。
殺してきたツケは払わなくちゃいけない。
勝ち逃げは、フェアじゃない。
残り香というには濃密すぎる硝煙の匂いを嗅ぎながら呟く
「フェアじゃないのは、嫌いだな」
~END~
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